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奨学金が返せないと訴訟になる!知っておきたい返済猶予制度

奨学金が返せないと訴訟になる!知っておきたい返済猶予制度

日本学生支援機構が2012年に行った「学生生活調査」によると、奨学金を受給している学生の割合は大学学部(昼間)で52.5%と、2人に1人の学生が奨学金を借りて大学に通っていることが分かりました。

多くの人が活用している奨学金ですが、大学を卒業したら返済をしていかなければなりません。でも昨今の不況から、なかなか正社員としての働き口が見つからなかったり、給料が上がらない人が多く、奨学金を返済できない延滞者が増えているのが現状です。

奨学金を返済できない場合、消費者金融からの借り入れなどと同様に、延滞金が上乗せされます。さらに本人だけでなく、連帯保証人となっている身内にも返済の督促の電話が入り、それでも返済が滞った場合には、財産が差し押さえられてしまうケースもあるんです。

奨学金を返せなくなったらどうなってしまうのか、また奨学金の返済が滞った場合に活用して欲しい返済猶予制度について、しっかり紹介します。

毎月の奨学金の返済に追われている人も、救済制度を知っていれば毎月の生活の不安も解消されますよ。

奨学金が返せない人が増えている理由!非正規雇用増加と収入減

2013年度末時点で奨学金の返済義務を負う342万人のうち、3ヶ月以上滞納をしている人はおよそ19万人、1日以上の延滞者になるとおよそ33万人と、全体の10%もの人が奨学金を返せていないのが現実です。

さらに奨学金返還をめぐる訴訟は、2004年の58件から、2012年には6,193件とおよそ100倍にも増えています。

どうしてこんなにも奨学金を返せない人が増加してしまったのでしょうか。近年の景気の動向や政府の調査結果から、奨学金を返せない人が増えてしまった原因を紹介します。

返還できなくなった理由の7割以上が収入減によるものだった

日本学生支援機構が2013年に行った「奨学金の延滞者に関する属性調査結果」によると、延滞が始まった理由のうち72.9%が「収入が減ったため」でした。

収入が減ってしまい、奨学金返済ができない人が増えてしまった背景には、派遣社員やパートといった非正規雇用の割合が増えていることが一因として考えられます。

以下のグラフは総務省統計局が作成した非正規雇用者の割合の推移と、年齢別非正規雇用者の割合です。

左のグラフを見ると、非正規雇用者の割合は、1990年の20.2%から2014年には37.4%と2倍近くに増えており、右のグラフからは2014年時点で、25~34歳の若者のうち3割近い人が非正規雇用者として働いていることが分かります。

最近は正社員として就職しても給料がカットされたり、ブラック企業問題でうつ病などになり退職せざるを得ない人が多くいます。病気で退職した場合、体調が戻って再就職しようとしても就職先が見つからず、アルバイトやパートで働くことになってしまうケースがほとんどです。

また、今の日本では有名大学を卒業しても就職できず、新卒で派遣社員やパート、フリーターで働く人も増えています。正社員として働くよりも、非正規雇用の給料は少ないことがほとんど。なので、給料が少なくて学生時代に借りた奨学金が返せないという人も増えてきました。

今は昔と違って、「年次が上がるにつれて給与も上がる」とか「定年までこの企業に勤めていれば安心」と簡単に信じられるほど、企業の雇用、賃金状況は安定していません。「奨学金が返せないなら働けばいい」という単純な問題ではないんですね。

奨学金の返済義務を知らなかったという人も結構いる

日本学生支援機構の奨学金の返済義務を知った時期に関するアンケートでは、気になる結果が出ています。

奨学金を延滞している人のうち、学生時代の貸与手続き前から返済義務を知っていた人はなんと56.1%しかいないことが分かったんです。残りの43.9%の人は、返済しなければならないことを知らずに借りてしまったということですね。
返済義務を知った時期 延滞者割合(%) 無延滞者割合(%)
貸与手続きを行う前 56.1 92.5
貸与手続き中 10.2 3.9
貸与中 5.3 1.3
貸与終了時 3.2 0.5
貸与終了後~返還開始前 4.5 0.6
返還開始~督促前 4.1 0.2
延滞督促を受けてから 9.4 0.2
分からない 6.3 0.7
その他 0.9 0.1
合計 100 100

一方、延滞していない人については、92.5%とほとんどの人が貸与手続き前から返済義務を知っていたこともこの調査で分かりました。

収入が減ってしまったことも奨学金返済が滞ってしまう一因ですが、そもそも「奨学金は返済しなければいけない」という意識が低いことも大きな原因の一つです。

奨学金は、給付金ではなく借金です。借りたらきちんと返済しなければなりません。

奨学金をいっぱい借りても、結婚して専業主婦になれば未来の旦那さんに返してもらえるでしょ?
あのねぇ、法的に結婚前の奨学金の返済義務は借りた本人にしか無いの。例え旦那さんに稼ぎがあってもね。

借りた本人が頑張って働いて返すか、本人が返せないなら連帯保証人が返していくのが筋なのよ!

返済できないと最悪給与差し押さえ!ブラックリスト入りも

奨学金を返済できない人が多いことは分かりましたが、奨学金を返済しないままでいると一体どうなってしまうのでしょうか。

延滞金がどれくらい加算されるのか、またどのくらいの期間延滞すればブラックリストに載ってしまったり給与が差し押さえられてしまうのか、詳しく紹介します。

奨学金を延滞すると、延滞金が発生して督促が始まる

クレジットカードで支払期限が過ぎた場合、延滞した日数に応じて延滞金が加算されてしまうことはご存知ですよね。奨学金についても同じように、返済期限が過ぎると延滞金が発生します。

延滞金については、第一種奨学金と第二種奨学金、また貸与終了年度によって利息が異なりますが、延滞している割賦金に対して2.5~5.0%の延滞金が加算されます。

そして借り入れした本人と保証人宛に、日本学生支援機構(もしくは債権回収代行会社)から、書面か電話で返済の督促が来ます。

返済をうっかり忘れていたとか、手違いで口座の残高不足だったなら、督促というよりも確認のための連絡というニュアンスなので心配はありません。でも、返済の目処が立たないという場合は、「いつまでに払えますか」と約束を取り付けられるケースも多くあります。

また電話での督促は、基本的に自宅へ掛かってきますが、複数回掛けて繋がらない場合は日本学生支援機構に届け出している本人の職場にかかってくることもあるので厄介です。

さらに督促の連絡は保証人にも入ります。奨学金を借りる場合、多くは親や身内に連帯保証人になってもらっているはずです。ある日突然、親元に督促の連絡が入ってしまう可能性があるので、返済が滞ってしまったら保証人とは密に連絡を取るようにしておきましょう。

督促に応じなければブラックリスト入り!訴訟、強制執行も

督促に応じず、3ヶ月以上延滞を続けていると個人信用情報機関に事故情報として登録されてしまいます。いわゆるブラックリストに載ってしまうということです。

ブラックリストに載ってしまうと登録された事故情報が消えない限り、ローンが組めなくなったり、クレジットカードが作れなくなったりと、お金の借り入れができなくなってしまいます。

ブラックリストに載ることの弊害や、事故情報の登録期間については、カードローン審査に通るためのポイント!審査対策と注意点で詳しく解説していますので参考にしてくださいね。

さらに9ヶ月以上の長期間延滞を続けると、日本学生支援機構の顧問弁護士名義で期限付きの督促状が届きます。それでも期限までに返済がされない場合には、ついに訴訟を起こされます。

今まで何度も督促して返済がなされなかったという事情があるため、裁判ではいくら借金が残っているのか明確にすると同時に、日本学生支援機構側に「借金を取り戻すために差し押さえをしていいですよ」という判決が出ます。

この判決が出ると、日本学生支援機構(もしくは債権回収代行会社)は延滞者の財産をいつでも差し押さえ(=強制執行)できるようになります。

差し押さえられるものは、家や土地などの不動産や、家財道具など挙げることができますが、基本的には一番手堅い給料が差し押さえられるケースが多いです。

このとき、督促にかかった費用や裁判費用も延滞者負担となるため、差し押さえの段階まで来ると、本来の返済額にかなりの金額が上乗せされて請求されることになります。

強制執行については、連帯保証人の給料や不動産、生命保険などに対しても延滞者と同時に行われることがあります。親や身内に迷惑をかけないためにも、きちんと返済しなければなりません。

えー怖い!でも日本学生支援機構ってちゃんとした団体だし、そこから委託を受けてる債権回収代行会社もそんなに取り立ても怖くないんじゃない?
債権回収代行会社は法務省から認可を受けて業務を行っているけど、だからといって無茶な取り立てをしないとはいえないわ。

最近は奨学金を返せない人も増えているし、きちんと返済してもらえるよう返済の迫り方も厳しくなったって話よ。

ちなみに、督促時にその場で現金を回収されることはないから、代行業者を装った詐欺には注意して。

奨学金が返せない場合に試して欲しい3つの方法

奨学金がどうしても返せない場合、どうしたらいいのでしょうか。「返済期限を延ばしたり、減額できたらいいのに」と思っている人に朗報です。

奨学金には返済できない人のために返済の猶予制度があります。また、それでも返済ができない場合には債務整理という方法もあります。

  • 返済期限猶予
  • 減額返還制度
  • 債務整理

それぞれの制度について詳しく説明します。

返済期限猶予なら経済状況に応じて返済猶予してもらえる

返済期限猶予は、災害や病気、失業などで経済困難に陥った場合に、一定期間返済期限を延期する制度です。

返還する元金や利息が免除または減額されるものではありませんが、経済状況に応じて最大で通算10年間、返済を猶予(引き延ばし)してもらえます。

この制度を活用すれば、一定期間返済できなくなってしまってもブラックリストに名前が載ったり、督促が来ることもありません。また、返済猶予してもらった期間について利息がつくこともありませんので安心です。

ただし、この返済期限猶予は誰でも受けることができるわけではありません。猶予が認められる収入など条件の目安は以下の通りです。

  • 年収が300万円以下であること(自営業者の場合200万円以下)
  • 願い出の時点で延滞していないこと

特に注意して欲しいのが、「願い出の時点で延滞していないこと」です。延滞してしまってからでは、返済期限猶予は受けることができません。

猶予を受けるためには日本学生支援機構に猶予願を提出しなければなりませんが、猶予願は返還期限猶予を希望する月の前々月末までに提出が必要です。

返済期限猶予願には、「収入に対して支出が多く、奨学金の返済が難しい状況」と「減額申請が通れば安定してきちんと返還できます」という旨をしっかりと明記しておくことがポイントです。

猶予願の審査は1~1.5ヶ月程度かかり、その後返還猶予が承認もしくは否認されます。「返済が滞りそう・・・」と思ったら、急いで返済期限猶予願を手配しましょう。

減額返還制度は毎月の返済額が半分になる

減額返還制度は、奨学金を借りる時に設定した月々の返済額を一定期間(最大10年間)半分に減らし、その分返済期間を延ばしてもらう制度です。

返済期間は延長されますが、利息は国庫が負担してくれるため、返済総額は変わりませんので安心してくださいね。なお、減額返還制度についても、誰でも認められるわけではありません。以下のような条件があります。

  • 年収が300万円以下であること(自営業者の場合200万円以下)
  • 願い出の時点で延滞していないこと
  • 奨学金返済に本人名義の引き落とし口座(リレー口座)が設定されていること
  • 月払いで返済していること

1つめと2つめの条件は、返済期限猶予の場合と同じですね。

3つめについては、奨学金の返還を本人名義の口座から自動的に引き落とされるよう設定していることが条件です。「リレー口座」とは、奨学金の返還に設定している口座のことで、「返還金が後輩奨学生の奨学金としてリレーされる」という意味でこのように呼ばれています。

現時点で奨学金返済額が毎月口座から引き落とされている場合は条件を満たしていることになります。もし、リレー口座を設定していない場合でも、リレー口座手続きの終了後に奨学金減額返還願を出せばOKです。

4つめの条件も、もし現在月払い以外の方法で返還していても、減額返還の承認により自動的に月払いでの返還方法に変更されます。

減額返還願には返済期限猶予願と同様に、「収入に対して支出が多く、奨学金の返済が難しい状況」と「減額申請が通れば安定してきちんと返還できます」という旨をしっかりと明記しましょう。

最終手段は債務整理!ただし連帯保証人に請求が回る

日本学生支援機構が設けている制度を使っても、どうしても返済できそうにないという場合は、任意整理や自己破産などといった「債務整理」を行うことも一つの手段です。

任意整理 ・弁護士や司法書士に返済方法や返済額について、支払可能な条件になるよう交渉してもらう方法。
・不法な高金利での借り入れがある場合は、過払い金の精算も可能。
特定調停 ・簡易裁判所に間に入ってもらい、債権者(借りた側)と債務者(貸した側)で返済方法や返済額について、今後の条件を話し合う方法。
・弁護士や司法書士などの専門家ではなく自分で交渉しなければならない。
個人再生 ・裁判所に申し立てて、債務(借金)を大幅に免責してもらい、長期の分割払いにしてもらう方法。
・将来の収入が見込めず、返済できない人は手続きできない。
・住所や氏名が官報に掲載されてしまう。
自己破産 ・裁判所に申し立てて、全ての借金をゼロにする方法。
・「支払い不能」と裁判所に判断された場合にのみ自己破産できる。
・財産の差し押さえがされる。
・住所や氏名が官報に掲載され、一定期間の職業制限もある。

個人再生や自己破産で奨学金返済について免責(=返済免除)されると、延滞者本人については今後の返済は不要になります。

ただ、注意しておかなければならないのが、自己破産して本人の免責が認められても、返済がチャラになったわけではなく、連帯保証人が代わりに返済義務を負うことになってしまいます。

奨学金を借りた時を思い出してください。両親や身内が連帯保証人になっている場合がほとんどですよね。連帯保証人になってくれた身内も返済できない場合、その人まで債務整理をしなければならなくなってしまう可能性もあり、そうなれば多大な迷惑をかけることになってしまうでしょう。

当サイトには自己破産したらどうなってしまうのか詳しく解説している記事もありますので、ぜひ読んでみてくださいね。

もし、他にも借金を抱えていて奨学金の返済が滞っているなら、4つの債務整理方法の中でも「任意整理」という方法を使う人が多いです。

任意整理なら整理する債務を選ぶことができるので、奨学金を整理の対象から外して他の消費者金融などからの借金だけ整理することも可能です。これなら連帯保証人にも影響はありません。また、弁護士や司法書士といった法律のプロに交渉してもらえるのも安心ですよね。

ただし、その場合は奨学金の返済は今まで通り続けなければならないので注意です。

自己破産以外の債務整理方法についても、「自己破産だけじゃない!債務整理の種類と方法を徹底紹介」で解説していますので、参考にしてください。

えーっ、奨学金も任意整理の対象にして、少しでも借金を減らしたいんだけどなぁ。無理なのかな?
奨学金も任意整理の対象にした場合、「将来の利息はカット、ただし原則3年間で返済を終わらせる」ということになっちゃうの。

今より返済額が大きくなってしまう可能性が高いし、奨学金は任意整理の対象にしないほうがいいわよ。

奨学金が返せないときには返済猶予制度を活用しよう

学生時代に深く考えずに借りた奨学金。返済できなければ、延滞金が上乗せされるだけではなく、最悪訴訟が起こされ、給与などの財産が差し押さえられてしまう可能性もあります。

もし、奨学金が返せそうにない場合は、まず日本学生支援機構の返済猶予制度を活用してください。

申し出が認められれば、返済期限を延期してもらえたり、毎月の返済を半額にしてもらうことができますよ。

また、返済猶予制度の申し出が認められなかったり、他の借金で奨学金が返せない場合は、弁護士や司法書士に相談して債務整理を考えてみてもいいでしょう。

ただし、債務整理の場合、返済が連帯保証人に回ってしまいます。連帯保証人になってくれた親や身内に迷惑をかけてしまう可能性があることを忘れないでくださいね。

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