奨学金が返せないときは?減額返還・猶予を状況別に選ぶ手順
奨学金が返せないと分かったら、まず「すでに延滞しているか」「いくらなら生活費を残して払えるか」を確認しましょう。JASSOの貸与奨学金には、毎月の負担を小さくする「減額返還」と、一時的に返還を待ってもらう「返還期限猶予」があります。
ただし、払える金額だけで使える制度が決まるわけではありません。延滞の有無、返還方式、収入や事情の証明なども関係します。この記事では制度の説明を読む前に、自分の状況から次に確認する手続きを選べるよう整理しました。
対象は主に日本学生支援機構(JASSO)の貸与奨学金です。大学・自治体・民間団体など別の奨学金は、各貸与元の制度を確認してください。
🧭 最初の確認表|延滞の有無と、今払える金額から考える
| 今の状況 | まず確認すること | その次にすること |
|---|---|---|
| まだ延滞していない。減らせば毎月払えそう | 減額返還の条件。所得連動返還方式を選んでいないかも確認 | 返還額をどこまで下げれば続けられるか計算し、願出方法を確認 |
| まだ延滞していない。減らしても払えない | 失業・経済困難・傷病などに応じた返還期限猶予 | 希望する開始月と、事由に合う証明書を確認 |
| すでに延滞している | 延滞中の返還期限猶予の手続き | 延滞開始月と、その期間の事情を証明できるか整理して相談 |
| 今年卒業した・退学した後、収入が少ない | 卒業・退学年月に応じた「新卒等」の猶予 | 通常の経済困難の書類を集める前に、対象期間を確認 |
| 奨学金以外の支払いも厳しい | 奨学金の制度と、生活・債務全体の相談先 | 生活費と各支払日を一覧にして、JASSOや適切な窓口へ相談 |
「半額なら払える」と思っても、返還後に食費が足りず再び借りる状態では、無理のない金額とは言いにくいでしょう。まず、手取り収入から家賃・光熱費・食費・医療費など必要な支出を引き、毎月続けられる額を考えてください。
⚖️ 減額返還と返還期限猶予は、どこが違う?
| 比べる項目 | 減額返還 | 返還期限猶予(一般猶予) |
|---|---|---|
| 利用中の返還 | 当初の月額を3分の2・2分の1・3分の1・4分の1にして返還 | 承認された期間の返還を先送り |
| 確認したい状況 | 減額すれば継続して返せる | 今は返すこと自体が難しい |
| 願い出の期間 | 1回につき12か月まで。継続には改めて願い出 | 原則1年ごとに願い出 |
| 通算の上限 | 15年(180か月) | 原則10年(120か月)。傷病など一部の事由は例外あり |
| 残りの奨学金 | 返還予定総額を減らす制度ではない | 元金や利子を免除する制度ではない |
| すでに延滞している場合 | 願出・審査時点で延滞していないことが条件 | 延滞中の人向けの手続きがある |
猶予には一般猶予以外の区分もあります。災害・傷病・生活保護受給中などは期間の扱いが異なるため、「どんな事情でも10年まで」と一括りにしないでください。
月15,000円なら、減額後はいくら?
| 当初月額に対する割合 | 月15,000円の場合 | 毎月の支出の差 |
|---|---|---|
| 3分の2 | 10,000円 | 5,000円 |
| 2分の1 | 7,500円 | 7,500円 |
| 3分の1 | 5,000円 | 10,000円 |
| 4分の1 | 3,750円 | 11,250円 |
減額返還では返還期間が延びますが、JASSOは第二種奨学金の利子の総支払額は変わらないと案内しています。「期間が延びるから、カードローンと同じように利息が増える」と考える必要はありません。
所得連動返還方式は、最初に確認する
平成29年度以降採用の第一種奨学金で、所得連動返還方式を選択している場合、減額返還は申請できません。自分の返還方式が分からなければ、スカラネット・パーソナルやJASSOへの相談で確認しましょう。「少しなら払える」だけで減額返還の対象と決めないことが大切です。
💴 収入の目安は「手取り」ではなく、証明書のどの金額かを見る
経済的な事情で申し込むときの基本的な目安は次のとおりです。数字だけで承認・不承認が決まるわけではなく、申請事由と証明書等の条件も確認します。
| 制度・事由 | 給与所得者 | 給与以外の所得を含む場合 |
|---|---|---|
| 減額返還(経済的事由) | 年間収入400万円以下が基本 | 年間所得300万円以下が基本 |
| 一般猶予(経済困難) | 年間収入300万円以下 | 年間所得200万円以下 |
減額返還は、本人が扶養する子どもが2人なら収入500万円・所得400万円以下、3人以上なら収入600万円・所得500万円以下の目安になります。被扶養者に関する控除等の扱いもあるため、基準額を少し超えた場合も、JASSOの案内に沿って確認してください。
一般猶予の「経済困難」は、現時点の案内では2025年11月以前に卒業・退学等した方が対象です。それより後の卒業・退学については、下の「新卒等」の対象期間を確認します。
給与の「収入」と「所得」を取り違えない
JASSOの猶予審査では、給与所得者は所得証明書の給与収入金額を確認します。「給与所得」や手取り額ではありません。給与以外の所得を含む場合は、合計所得金額等を確認する扱いです。
給与と副業収入がある場合など、自分がどの区分か判断できなければ、自己判断で金額を当てはめずに相談しましょう。売上・所得・手取りは同じ意味ではありません。
去年の収入が高くても、今年減った場合は確認できる
猶予の公式案内では、所得証明書の年収が基準を超えていても、現在減収している場合、直近3か月の給与明細書または給与証明書から年収を試算します。見るのは手取りではなく総支給額です。
掛け持ちで働いている場合は、勤務先ごとに同じ対象月の明細をそろえることが必要です。就職後間もなく3か月分がない場合の書類も案内されています。「去年の数字だけで無理」と決めず、現在の状況に合う証明方法を確認してください。
📝 延滞する前に|「相談・申請・承認」を分けて進める
手続きで見落としやすいのは、相談した日・申請した日・制度が承認された日が違うことです。申請しただけで、今月の引き落としが止まるとは限りません。
1.返還状況と申請事由を確認する
次の返還日、返還月額、延滞の有無、奨学生番号、返還方式を手元で確認します。そのうえで、減額返還か猶予か、失業・経済困難・新卒等などどの事情で願い出るかを調べてください。
2.オンラインで願い出られるか確認する
減額返還・猶予はスカラネット・パーソナルからの願い出が案内されていますが、事由やマイナンバーの提出状況等で条件があります。対象外の場合は願出用紙と必要書類を郵送します。オンライン画面で進められないことだけで、制度自体が使えないとは判断しないでください。
減額返還のオンライン申請では、新卒等・経済困難・失業中が対象事由として案内されています。傷病など、それ以外の事由やマイナンバーの情報だけでは審査できない場合は、書面の案内を確認します。
3.提出時期と、結果が出るまでの扱いを確認する
減額返還のオンライン願出は、開始希望月の3か月前から可能です。郵送による猶予は、延滞していない場合、開始希望月の3か月前から前々月末までの提出が案内されています。方法ごとに時期が違うため、同じ締切だと思わないようにしましょう。
JASSOは、猶予の審査中でも口座振替請求・払込通知書の発送や、延滞中の督促は停止できないとしています。次の支払日に間に合わない場合は、受付と承認の見通し、当面の返還の扱いを相談してください。
4.結果と適用月を確認し、継続が必要なら期限を控える
承認されたら、いつから・いつまで・いくらで返還するのかを確認します。制度は一度の申請でずっと続くものではありません。減額返還でも支払いが続かなくなった場合は、放置せずに次の対応を相談しましょう。
🎓 卒業したばかりで払えない場合は「新卒等」を確認
2026年3月に卒業し、10月から返還が始まる方などは、「新卒等」の猶予に当てはまる可能性があります。対象は、卒業・退学後の無職・未就職などによる低収入や、進学準備などの事情がある方です。
現在の公式案内では、2025年12月〜2026年11月に卒業・退学した方は、2027年6月までに申請すると、収入証明書等の添付書類が不要とされています。自動的に猶予になるわけではなく、願い出と審査が必要です。
一般の経済困難と必要書類が同じとは限らないため、まず卒業・退学年月を確かめましょう。この対象期間は年度が変わると更新されるので、申請時の公式ページも確認してください。
⚠️ すでに延滞している場合|いつから払えないかを整理する
延滞中でも、返還期限猶予を願い出る手続きがあります。先に延滞を解消しないと申し込めない減額返還と混同しないようにしましょう。
| 事情を証明できる範囲 | JASSOが案内する手続き |
|---|---|
| 延滞開始月からの全期間について、事由に合う証明書を出せる | その期間について一般猶予を申請。原則として延滞開始から1年ごとに書類を用意 |
| 途中から現在までの期間なら証明できる | 証明できない期間等の返還分を入金したうえで一般猶予を申請する方法を確認 |
| 過去の証明書をそろえられず、その期間の入金も難しい | 延滞据置猶予の条件を確認 |
延滞据置猶予は、過去の延滞が消える制度ではありません。承認された場合、後で証明書が見つかっても、その承認年月より前の期間を遡って猶予申請できない扱いがあります。過去の事情と用意できる書類を整理してから相談してください。
「3か月までは大丈夫」とは考えない
JASSOでは、個人信用情報の取扱いに同意している返還者が延滞3か月以上になると、信用情報機関への登録対象になります。新たに返還を始めた方は、開始から6か月経過した時点で延滞3か月以上の場合が対象となり、その後は毎月判定されます。
これは支払いを待ってよい期間ではありません。すでに払えないことが分かっているなら、登録対象になるかどうかにかかわらず早めに相談してください。信用情報に関する仕組みは、信用情報の基礎と自分で確認する方法で整理しています。
☎️ 相談前のメモ|伝えることを5つに絞る
電話で何から話せばよいか分からないときは、次の内容を手元に書いておくと相談を始めやすくなります。これは編集部が作成した準備用のメモで、JASSOの所定様式ではありません。個人情報をこのサイトに送る必要はありません。
- 奨学生番号、現在の返還方式・返還月額、次の返還日
- 延滞しているか。している場合は、いつの分からか
- 払えなくなった理由と、その事情が始まった時期
- 現在の収入と、無理なく返還に回せそうな金額
- 用意できる証明書と、まだそろっていない書類
相談の伝え方の例:
「収入が減り、今の返還額では生活費が足りません。延滞はまだありません。減額返還と猶予のどちらの条件を確認すればよいか、必要な証明書と開始時期も教えてください。」
上は架空の相談文例で、実際の相談者の体験談ではありません。JASSOの奨学金相談センターは0570-666-301、ナビダイヤルを使えない場合は03-6743-6100。受付は平日9〜20時(土日祝日・年末年始を除く)で、通話料金は本人負担です。
奨学金だけでなく家賃や生活費も足りない場合は、生活費に困ったときの公的支援も確認してください。奨学金の申請と生活全体の立て直しを一緒に考えることで、新たに借りて返し続ける状態を避けやすくなります。
❓ よくある質問
無職になったら、奨学金は自動的に止まりますか?
止まりません。失業や低収入などに応じた制度を自分から願い出て、承認を受ける必要があります。卒業したばかりの方は「新卒等」の条件も確認してください。
申請したので、今月は払わなくてもよいですか?
申請だけで返還が止まるわけではありません。特に猶予の審査中も請求・督促は停止できないと案内されています。適用開始月や当面の扱いをJASSOへ確認してください。
制度が使えるか分からないときも相談してよいですか?
自分の事情と返還状況を整理して、奨学金相談センターへ確認しましょう。年収だけで決めつけず、現在の減収や卒業年月、用意できる証明書も伝えると確認すべき条件が明確になります。
「返せないのは甘えか」と自分を責めるより、今の条件でどの手続きを確認するかを決めることが先です。返還と生活の相談を広く探す場合は、借金・返済のガイド一覧をご覧ください。
📚 公式情報・確認日
情報確認日:2026年10月18日。編集:CARDLOAN GIRLS編集部(運営:合同会社CREAMWORKS)。JASSOの公式情報をもとに、確認の順番・比較表・相談用メモを編集部で作成しています。個別の承認可否や法的判断を行う記事ではありません。
- 減額返還:対象条件・期間・所得連動返還方式の扱い/オンライン申請の条件・手順
- 返還期限猶予:制度の概要/申請・提出時期・審査中の扱い
- 収入と申請事由:経済困難/収入の見方・減収時の証明/新卒等
- 延滞時:延滞中の猶予手続き/信用情報への登録条件
- 連絡先:JASSO・返還に関するお問い合わせ
更新時には、収入基準と控除、卒業・退学年月による申請事由、必要書類、オンライン申請条件、提出時期、延滞中の取扱い、相談窓口の連絡先を再確認します。
