相続税はいくらから?基礎控除・税率・申告期限と今からできる対策
「親の預金や実家を相続したら、私も相続税を払うの?」
まず確認したいのは、税率ではなく、税金の計算上の遺産額が「基礎控除」を超えるかどうかです。
相続税の基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数。法定相続人が子ども2人なら4,200万円、配偶者と子ども2人なら4,800万円です。
ただし、見るのは自分が受け取る預金だけではありません。実家などの不動産や、一定の生命保険金・生前贈与も関係します。また、特例を使って税額が0円になる場合でも、申告が必要なことがあります。
この記事では、「かかるか確認する → 金額の仕組みを知る → 期限と準備を確認する」の順に整理します。最初から難しい節税方法を覚える必要はありません。
情報確認日:2026年9月26日。日本国内の一般的な相続を中心に説明しています。個別の税額や特例の適用は、財産・家族構成などで異なります。申告や贈与を実行する前には、税務署または税理士へご確認ください。
💡 相続税はいくらから?まずは基礎控除を確認
相続税は、亡くなった人の財産を相続や遺言などによって取得した場合に関係する税金です。相続した人全員に、必ず税金がかかるわけではありません。
基礎控除は「相続人1人ずつの非課税枠」ではない
基礎控除は、亡くなった人の遺産全体について計算する枠です。
| 法定相続人の人数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
たとえば、子ども2人が相続する場合の4,200万円は、子ども1人につき4,200万円ではありません。 遺産全体を確認するための金額です。
法定相続人とは、法律上相続人となる人のこと。単に「財産を分ける予定の人数」で数えないようにしましょう。相続放棄や養子がいる場合は、税の計算上の人数に特別なルールがあります。
基礎控除以内なら、原則として申告も納税も不要
小規模宅地等の特例などを使う前の課税価格の合計額が基礎控除以内であれば、相続税の申告・納税は原則不要です。
一方、「特例を使わなくても基礎控除以内」と「特例を使えば税額が0円」は別です。後者には申告が必要なケースがあります。
🏠 預金だけでは判断できない|相続税の対象になる財産
「預金は少ないから大丈夫」と思っていても、実家や土地があるなら一緒に確認しましょう。
| 確認するもの | 見落としやすいポイント |
|---|---|
| 現金・預貯金 | 複数の銀行口座や、自宅で保管している現金も確認 |
| 土地・家屋 | 預金とは別に、相続税のルールで評価する |
| 株式などの有価証券 | 証券口座も財産の確認対象 |
| 死亡保険金 | 保険料を誰が負担したか、誰が受け取るかを確認 |
| 生前に受け取った贈与 | 相続税の計算に加える対象かを確認 |
相続税の対象は、現金に限りません。金銭に換算できる財産や、税法上相続したものと扱われる財産も含まれます。
実家の値段は、購入価格をそのまま使わない
土地の評価には、主に「路線価方式」と「倍率方式」があります。土地の場所や形状などによって計算が変わり、家屋は原則として固定資産税評価額で評価します。
分譲マンションには、2024年1月1日以後の相続などで区分所有補正率を使う場合もあります。昔の購入価格や、ネットで見た売却相場をそのまま申告額にはできません。
借金や葬式費用は、差し引けるものを分けて整理
亡くなった時点で存在し、確実と認められる借入金や未払金などは、一定の相続人等が負担する場合、遺産額から差し引けます。ただし、すべての支出が対象になるわけではありません。
葬式費用も、火葬・埋葬や通常の葬儀に欠かせない費用などは控除対象になります。一方、香典返し、墓石・墓地の購入、法事の費用などは対象外です。領収書はまとめて保管し、内容を分けておくと確認しやすくなります。
🧮 相続税の税率と計算方法|遺産にそのまま税率を掛けない
相続税の税率は10〜55%ですが、受け取った財産全部に、いきなりこの税率を掛けるわけではありません。
おおまかな流れは、次のとおりです。
- 財産・非課税分・債務・加算する贈与などを整理する。
- 課税価格の合計額から基礎控除を引く。
- 残額を法定相続分で分けたと仮定して、それぞれの税額を計算・合計する。
- 合計した税額を実際の課税価格の割合で各人に割り振り、税額控除や加算を反映する。
税率の早見表
下表に当てはめるのは、上の手順3にある「基礎控除後の額を法定相続分で分けた金額」です。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 速算用の控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | 0円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超〜2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超〜3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超〜6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
各金額に税率を掛け、右端の控除額を引いて計算します。この控除額は、最初に引く「基礎控除」とは別です。
計算例|正味の遺産5,000万円を子ども2人で半分ずつ相続
配偶者はおらず、法定相続人は子ども2人。非課税分・債務などの調整後の課税価格の合計額が5,000万円で、税額控除や2割加算もないと仮定します。
| 手順 | 計算 |
|---|---|
| 基礎控除 | 3,000万円+600万円×2人=4,200万円 |
| 基礎控除を引いた残額 | 5,000万円−4,200万円=800万円 |
| 法定相続分で仮に分ける | 800万円÷2人=1人400万円 |
| 税額を計算して合計 | 400万円×10%×2人=80万円 |
| 実際にも半分ずつ相続した場合 | 各人40万円 |
これは国税庁の計算手順に基づく説明用の例です。「5,000万円の遺産なら誰でも80万円」ではなく、家族構成や財産の分け方、適用できる制度で結果が変わります。
🌿 相続税の負担を軽くする制度|税額0円でも申告に注意
対策を考えるときは、「何を買うか」「誰に贈るか」の前に、今の財産に適用できる制度を確認しましょう。
配偶者の税額軽減|1億6,000万円と法定相続分を比較
配偶者が実際に取得した正味の遺産額について、1億6,000万円と配偶者の法定相続分相当額の、どちらか多い金額までは、配偶者に相続税がかからない制度です。
ただし、この軽減を受けるには申告などの手続きが必要です。「配偶者だから何もしなくてよい」という制度ではありません。また、子どもなど他の人の税額まで一緒に0円になるわけではありません。
小規模宅地等の特例|一定の自宅の土地は評価額を減らせる
一定の居住用宅地等では、330㎡までの部分について評価額を80%減額できる場合があります。税金そのものを一律80%引きにする制度ではありません。
誰が相続するか、住み続けるか、保有を続けるかなどで条件が異なります。この特例で基礎控除以内になる場合も申告が必要です。「実家を相続したから自動的に使える」とは判断せず、適用条件を確認してください。
生命保険の非課税枠|受取人と保険料の負担者を確認
亡くなった人が保険料を負担していた死亡保険金を相続人が受け取る場合、500万円×法定相続人の数という非課税限度額があります。
これは対象となる相続人が受け取る保険金の合計に対する枠で、相続人以外が受け取る保険金には適用されません。相続放棄した人も、この非課税の適用では相続人に含まれません。
節税だけを理由に保険へ加入するのではなく、保険料の負担や保障の必要性も含めて考えましょう。
🎁 生前贈与は相続税対策になる?「110万円なら安心」とは限らない
生前贈与については、贈与したときの税金と、亡くなったときの相続税を分けて確認することが大切です。
暦年課税の贈与は、一定期間分を相続税の計算に加える
亡くなった人から相続などで財産を取得した人に、加算対象期間内の暦年課税による贈与がある場合は、その贈与を相続税の計算に加えるルールがあります。贈与税の基礎控除110万円以内だった贈与も、加算対象になり得ます。
2024年からの改正は段階的に適用されるため、亡くなった日で対象期間が異なります。
| 相続が始まった日 | 暦年課税の贈与の加算対象期間 |
|---|---|
| 2026年12月31日まで | 相続開始前3年以内 |
| 2027年1月1日〜2030年12月31日 | 2024年1月1日から死亡日まで |
| 2031年1月1日以後 | 相続開始前7年以内 |
延長された3年超の部分には、贈与財産の合計額から総額100万円を控除する扱いがあります。毎年100万円ではありません。対象者や加算しない財産などにも条件があるため、贈与の記録を確認してください。
相続時精算課税は、選ぶ前に相談したい制度
相続時精算課税には、2024年以後の贈与について年110万円の基礎控除があります。ただし、年齢等の適用条件や届出があり、一度選ぶと、その贈与者からの贈与について暦年課税へ戻せません。
よく聞く「2,500万円」も、相続税まで一律に非課税になる枠ではありません。贈与税の特別控除と、後の相続税の計算をセットで見る必要があります。
家族の生活費や将来の介護費を圧迫してまで、贈与を急ぐ必要はありません。まず財産の全体像と、将来必要なお金を整理するところから始めましょう。
📅 相続税はいつまで?申告・納税までの準備
申告と納税の期限は、原則として亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。通常は亡くなった日を基準に確認します。
亡くなった人の住所が日本国内にある場合、申告先は、その人の住所地を管轄する税務署です。相続人自身の住所地とは限りません。申告だけ終えても納税が未了なら、延滞税がかかる場合があります。
最初に整理するチェックリスト
次の表は、相談・確認のための準備メモです。全員に必要な申告添付書類の一覧ではありません。
| 確認事項 | 手元に集めたい情報・資料の例 |
|---|---|
| いつが期限か | 亡くなった日・そのことを知った日 |
| 相続人は誰か | 家族関係を確認する戸籍等、遺言の有無 |
| 財産はどこにあるか | 預金・証券口座の情報、不動産の資料、保険の支払通知等 |
| 差し引けるものはあるか | 借入残高、未払金、葬儀費用の領収書等 |
| 生前贈与はあるか | 贈与の時期・金額・契約や送金の記録、過去の申告内容 |
| 制度を使う条件を満たすか | 財産の分け方、土地の居住・保有状況等 |
必要な申告書や添付書類は、財産や使う特例によって変わります。最終的には国税庁の相続税の申告手続で確認してください。
遺産の分け方が決まっていなくても、期限は延びない
遺産分割の話し合いが終わらないことだけを理由に、申告期限は延長されません。未分割での申告では、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用できない財産があるため、早めの相談が必要です。
後から分割が成立した場合には修正申告や更正の請求等を行えることがありますが、期限・書類の条件があります。
🤝 相続税を払えない・判断できないときの相談先
「相続したのは実家が中心で、税金を払う現金が少ない」という場合もあります。新たな借入れを決める前に、税額の確認と税務署への相談を進めましょう。
分けて納める「延納」には条件がある
相続税は原則として期限までに金銭で一括納付します。ただし、税額が10万円を超え、金銭で納めることが難しいなどの要件を満たす場合は、申請・許可を受けて年払いにする「延納」を利用できる場合があります。
担保は原則必要ですが、延納税額100万円以下かつ延納期間3年以下なら不要です。延納には利子税がかかり、申請期限もあります。自分で支払日を後ろにずらす制度ではありません。
何を聞きたいかで、相談先を分ける
- 制度や手続きの一般的な確認:国税庁の相談窓口を確認する。
- 自分の財産の評価・税額計算・申告の依頼:相続税を扱う税理士に相談し、対応範囲と料金を確認する。
相談前に「相続人の人数」「預金・不動産等の一覧」「期限」「迷っている点」をメモしておくと、聞きたいことを整理できます。
生活費自体にも困っている場合は、納税の相談とは別に、生活に困ったときの公的支援も確認してみてください。公的支援が相続税を肩代わりする、という意味ではありません。
❓ 相続税のよくある質問
1,000万円を相続したら相続税はいくらですか?
自分の受取額が1,000万円という情報だけでは計算できません。他の相続人が取得した分も含む課税価格の合計額、法定相続人の人数、適用する制度などで変わります。まずは遺産全体と基礎控除を確認しましょう。
税額が0円なら、申告しなくてもいいですか?
必ずしもそうではありません。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って0円になる場合は、申告等が必要です。「なぜ0円になるのか」を確認してください。
土地しか相続していなくても相続税はかかりますか?
土地も対象財産です。現金の有無だけでは判断できません。相続税評価額や特例の条件を確認し、納税資金が足りない場合は期限前に相談しましょう。
✅ まとめ|相続税対策は「財産と期限の確認」から
最初にすることは、難しい節税方法を探すことではありません。
- 相続人と財産の全体像を整理する。
- 基礎控除を超えるか、特例の手続きが必要かを確認する。
- 期限から逆算し、判断に迷う部分を相談する。
「税金がかかるか」「申告が必要か」「払うお金を用意できるか」は、それぞれ別の確認事項です。分けて考えることで、今やることが見えやすくなります。
この記事は一般的な制度説明であり、個別の申告判断や税務相談に代わるものではありません。制度は変更されることがあるため、実際に手続きする際は記事末の公式資料で最新の条件をご確認ください。
参考資料(国税庁)
